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1人の写真家の軌跡


慌てて行ってきた風間健介さんの写真展(東川町文化ギャラリー)。これまで1点、2点の作品を見かけてはいたが、今回初めてまとまった写真群、プリント展を見た。

展示室に入ってすぐの「夕張の風景」写真、晴れた日の、春を迎える雪の明るさ、影の様子が、ちょうど今の季節と重なって、最近撮った写真なのか、まだいくらか炭鉱業があった頃に撮った写真なのか、私には区別がつかなくて、プリントを見入ってしまった。今も北海道のどこかにありそうな風景だと思った。夜に撮った写真は家の中からの電気の灯りが、写真を見るこちら側との繋がりのように思えたのは、わかりやすい人の気配だった。(そういえば、人が写った写真がなかった。)それとは逆に、一目で遺構とわかる写真の被写体は、こちら側との繋がりがなくなって、そのものの存在のみで時空に、その場に存在しているように見えた。

夜に撮影された遺構の写真の空には、星の軌跡が一緒に写っている。その奇跡の長さで、それなりに露出に時間をかけていたことを想像するのは難しくない。凍つく星空の下で夜の遺構に光を当てて浮かび上がらせる。星の軌跡が写り込むことで時間の流れを感じるが、それ以外に何かを見ようとしていたのかと思ってしまうのは、その撮影行為そのものが、なかなか大変に思えてしまうから。

夕張の写真から晩年の写真まで、1人の作家の軌跡を見られたことも興味深かった。

夕張の写真(風景、遺構、解体の風景)から「過去や時代・歴史」というよりも、まるで今現在のことのように見えた。プリントが綺麗なのもそうだし、画面内に時代がわかるようなポスター等のものが写っていないせいもあるが、光の表現の仕方が、今もなおそのときの時間をそのまま今に伝えてきていると思う。写真の中の世界は時間という風化にあうことなく、当時の様子をそのままに今に存在し続けている、いつまでも見入ってしまう写真だった。どこかで常設展になっていたら、ときどき見に行きたくなる写真展だった。

風間健介遺作展

2023年2月20日(月)から3月5日(日)

「写真の町」東川町文化ギャラリー


帰る高速バスの中で見た、旭川の夕陽がとても綺麗だった。

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